軽音界隈におけるキーボーディストの苦悩(前半)

タイトル通り軽音・バンド界隈におけるキーボーディストの苦悩についてつらつら述べていきたい。

 

本題に入る前に、筆者の鍵盤弾きとしてのルーツ的なものをしばし語らせてほしい。

 

筆者が初めて鍵盤に触れたのは5歳のときである。

それはピアノ、、ではなくエレクトーンと呼ばれるものであった。

両手と片足で同時に3つの旋律を鍵盤で弾くというやったことのない人からすればそんなこと本当にできるの?って感じの楽器で、

基本的にはボーカルのメロディ、主旋律を右手、

ギターコードやピアノコードを左手、

ベース音を足

で弾くことにより曲が成立する。

ドラムやパーカッション音はシーケンサによって打ち込まれていることがほとんどで、このシーケンサに合わせて曲を演奏する。

自分が通っていたエレクトーン教室が比較的ゆるかったということもあり、割と楽しく5歳から18歳まで演奏していた。

 

そしてそのエレクトーン教室、ヤマハ音楽教室に縁があり、詳しい経緯は省略するが初めてバンドのキーボードとして演奏したのは小学校三年生のときだった。

シャ乱Qのシングルベッドやズルい女のシンセをショルキーで弾いたのが初めてで、バンドメンバーもなんかやたら多かったことだけは覚えている(謎に10人くらいいた)。

 

そしてなんやかんやあって大学に入り、周りの音楽のレベルの高さに辟易としていたこともあって俺は絶対音楽をやらねえと思いながらも気づいたら軽音サークルに入って大学のB1〜B3の3年間で大体500曲弱演奏した。

この記事では主にこの大学時代の経験による苦悩をメインで語っていく。

ルーツを語らせてくれとかかっこつけたくせにすごい雑になっちゃった、まあいいや

 

まずなぜこの記事を書こうと思ったのか

 

最近、ぼっちざろっくを一気見した。

友達のいないぼっちインキャ女子高生がバンドに打ち込むというまあ面白いアニメなのだが

 

現在(2022/12/19)時点で

キーボーディストが一人も出てこないのである。

 

いや、それどころか

バンドアニメのはずなのに鍵盤の1鍵すら観測できなかった。

まるでゆるゆりにおける男性キャラである。

 

アニメ自体は結構面白かったし、長くバンドをやっている人間からするとリアルやなぁと思う描写もいっぱいあっただけに一人のキーボーディストとしてはその事実に気づいた時は無念すら感じてしまった。

 

よし、この気持ちを記事にしよう。

ということでこの記事は生まれた。

 

次項からは本題に入る。

 

1.バンドの楽器としてカウントしてもらえない

どういうことか説明しよう。

 

Twitterやインスタでこういう投稿を結構目にする。

パターン①:軽音部に入るあなたに楽器診断!

◯◯なあなたは、、ギター!

◯◯なあなたは、、ベース!

◯◯なあなたは、、ドラム!

...

...

 

いや、キーボードは?

 

パターン②:軽音あるある!

軽音あるあるボーカル編!

間奏のギターソロ中座りがち!

 

軽音あるあるギター編!

カポつけ忘れて最初の2小節目で演奏止めちゃう!

 

軽音あるあるベース編!

親指の反り具合でマウント取りがち!

 

軽音あるあるドラム編! 

個人練の一番最初にスネア叩いてスナッピー上げ忘れて「あ」ってなっちゃう!

 

...

...

 

いや、キーボードは?

 

こんな感じでキーボードを軽音の楽器として認識していない輩が一定数いる。

(もちろんちゃんと仲間に入れてくれている人もいるが)

 

さらにバンドマンのあなた、こんな経験はないだろうか。

初対面の人にバンドやってますと言うと、「ギターやってそう!」とか「ドラムやってそう!」とかイメージでどのパートを担当してそうかを言われるという会話だ。

 

「ギター?」           →No!

「ベース!」           →No!

「てことはドラム?」       →No!

「え?じゃあボーカルってこと?」 →No!

「え?何やってるの?」      →「キーボードやで」

 

「あー…」

 

「あー…」じゃねえよ。

 

 

2.一曲中に合計8小節しか弾かせてもらえないような曲が普通にめちゃくちゃある

 

以前にツイッターでこんなツイートを見つけた。

本家のツイートのリンクをちゃんと貼ろうと探しにいったがツイートが消えていたので以下に要約する。説明が下手だったらごめん。

※ツイート消えてませんでした、失礼

 

・ある軽音部では入部した新入生が新入生同志でバンドを組み課題曲を演奏するしきたりがあった

・課題曲はニルヴァーナの「Smells Like Teen Spirit」であった

 (言うまでもないが洋楽における超有名レジェンド曲である、筆者は高1のときにこの曲にハマり高1の1年間だけで何百回聴いたかわからんくらい聴いた)

・どんな編成でもこの曲をしないといけない

・ある年新入生にキーボード志望の子が入り、編成がキーボード入りとなった

・だが「Smells Like Teen Spirit」にはキーボードのパートが存在しない

 

また、この曲の特徴の1つであるイントロにはパワーコードのカッティングを交えたフレーズ(デェーンデデッチャキチャキデンデンデンデェーンデデッチャキチャキデンデンデ)があるのだが、

このフレーズの後に絶妙なギターの「タラー(音階はドファ)」という音が鳴る。

そして

 

・この新入生バンドのキーボーディストが弾くことを許されたフレーズは「ドファー」のみであった

 

キーボードのない曲において無理にキーボードを編成するという状況がために、

この新入生キーボーディストは5分ある曲のうち「ドファー」と12回弾くだけであとはずっと演奏中棒立ちというとても悲しいことになってしまったのである。

 

この「ドファー」事件、結構RTもされておりその反応は

「ドファーwww」

「シュールすぎるww」

といった反応がほとんどだったのをよく覚えているのだが、筆者は全く笑えなかった。

むしろ憤りすら感じた。

 

この状況、身に覚えしかないからである。

 

もし自分がこの状況に遭遇したら絶望しキーボードの人に全力で同情すると思う。

「しょうがないよな、だって弾くとこないしアレンジしてオリジナルのフレーズ考えようものなら曲の雰囲気全然変わるしそもそもアレンジなんて普通したことないもんな」

と抱擁してあげたくなるだろう。

 

そしてこの状況はマジで普通に起こり得る。

 

世の中のほとんどの曲は大体3〜5分くらいの尺なのだが、ちょこっとサビの前やAメロの前にギターやベースやドラムでは出せない音が入ってる、みたいな曲がめちゃくちゃあったりする。

大体曲の中に1回だけ、とかであればドラムがスティックやハイハットを叩いたりしてなんとかなったりするものの、サビ前で目立つ曲の中で割と何回か出てくる、となるとキーボードが呼ばれるということがある。

 

そしてこのドファー事件が起こってしまう。(血涙)

 

ちなみにこのドファー事件が起こりうる曲、具体的にどんなのがあるかを挙げてみよう。

 

SCANDALの瞬間センチメンタル

・ワンオクの最近の曲全般(Stuck in the middleとかCry Outとか)

 書いてて思ったけどこれらの曲も最早最近とは言えなくなってきた、恐ろしい

・ユニゾンの徹頭徹尾夜な夜なドライブ

UVER浮世Crossing

ブルーハーツのTrain Train

KEYTALKの桜花爛漫、Monster Dance

フレデリックのオドループ

CrossfaithのJagerbomb

Mrs. GREEN APPLEのパブリックや愛情と矛先(どちらも一応ソロがあるのでマシだが、それでも曲中のほとんどは暇でしょうがない)

 

、、、などなど

ワンオクとかUVERとかドロスとかは多分めっちゃ該当曲多いと思う

 

てかミセス、お前キーボードパートバンド内におるやんけ、どうなってんねん

 

余談だが、ドファー事件対策法としては以下が有効だろう。

the telephonesの岡本さんになる

the telephonesというバンドがあるのだが、このバンドのキーボードを担当する岡本氏、楽曲中に演奏していない時間における立ち回りが結構ヤバい。

上半身裸で狂ったようにステージの端から端まで走り回ったり気づいたらステージからいなくなったりしている。

もし演奏していない時間、棒立ちしていてやることがないのであれば岡本氏のように狂ってみてはいかがだろうか。

 

3.演奏のハードルが高い(音作りが難しい)

 

今度は2とは対照的な話となる。

軽音でキーボードやってる人、結構パターンとして多いのが

「昔ピアノ(エレクトーン)習ってたけど軽音部入ってみたかったから入ったらキーボードをやることになった」

だと思う。

そんな鍵盤の演奏には問題ないですよー、という人でも、バンドを演奏する上で必ず最初にある壁にぶち当たる。

 

そう、音作りである。

 

市販のキーボード(シンセサイザー)には何100種類もプリセット音色※が入ってたりするのだが、初めてキーボードパートを任された人は演奏する曲の演奏するフレーズに近い音色はどれだろう、と音色を探す作業を絶対にやる。

(※シンセサイザーに元から設定されている音色のことをプリセット音色という)

 

そしてある程度なんとかなったりするのだが、いろんな曲に出会っていくうちにプリセット音色の中に曲の雰囲気にぴったりあう音がないという状況に陥る。

 

この状況に陥ったキーボーディストは初めて音作りにチャレンジすることになる。

そして絶望する。

 

エンべ、ADSR、LFOポルタメントモジュレーション、ノコギリ波、矩形波三角波、BPF、LPF、HPF、カットオフ、レゾナンス、、、

 

知らん単語のオンパレードに遭遇する。

 

そして実際にこのシンセのモニター上で知らん単語たちをいじってみて音を変えたりするのだが、種類によってはマジでいじっても違いがわからんのだ。

というか下手にいじってもプリセット音源のバランスを壊すことになるので大抵はプリセット音の劣化となってしまう。

 

この音作りが大変という話、専門的に説明しようと思えばいくらでも説明できるのだがとにかく大変だと言いたい。

具体的な話をすると1曲の数小節しかない1フレーズの音色のために数時間要するということもある。

実際にフレーズを暗譜する時間が5分なのに対し、音作りに何時間もかけている人はかけているのだ。

 

キーボードありの曲をコピーしたことがある人へ

もし一緒に演奏していてキーボードの音色が原曲からかけ離れておらず、全く気にならなかったならば、

そのバンドのキーボードはその音色を作り上げるのに下手したら数時間かかっているかもしれないという事実をわかってほしい。(切実)

労ってあげてほしい。(切実)

 

 

4.弾いてみたの数が少なすぎてナレッジを手に入れるのがきつい

このご時世、ある程度有名な曲ならばYoutubeで弾いてみたの動画が全くあがっていないということはほとんどないだろう。

 

そしてバンドをやっている人間で弾いてみた動画を参考にしたことがないという人、絶対いないと思う

 

そもそも筆者は曲を紙の上におこすというのがそもそも無理があると思っていて

楽譜上からだけでは読み取れない要素っていうのは必ずあると考えている。

一つの曲があり、その一つの曲から生まれた一つの楽譜があったとして

その曲を知らない人間が楽譜通りに完璧に演奏したとしても、原曲の演奏を完全に再現できるということはそうそうないんじゃなかろうか。

 

話が脱線しそうなので戻る。

つまり何が言いたいかというと、楽器を演奏するうえでは楽譜だけではなく他人の演奏を参考できるとなればそれに越したことはないということを言いたい。

 

そしてキーボード、その「弾いてみた(叩いてみた)」を参考にすることが基本できないのである。

 

昔に比べたらある程度キーボードの弾いてみた動画も増えてきたのかもしれないが

他の楽器(ギター、ベース、ドラム)に比べればまだまだ圧倒的に少ない。

 

そしてこれ、キーボードあるあるなのだが

「(曲名) 弾いてみた キーボード」

などで検索したとしよう。

 

これで出てくる動画、「その曲のピアノアレンジ」率がめちゃくちゃ高い。

我々が求めているのはキーボードパートの演奏してみたであって、その曲がピアノだけで弾けたとしてもなんも嬉しくないのだ。

(と言いつつもキーとかリフの音階がわかったりするから全く助かってないわけじゃない、ピアノアレンジしてくれてる人ありがとう)

 

、、、とここまで長々と書いたのだが一旦ここまでを前半とする。

 

後半のネタもまだまだあるのだが反応がもらえれば嬉々として続きを書くし、もらえなければそれはそれで密かに続きを書き殴ろうと思う。

 

後半へ乞うご期待。