神映画「サマーウォーズ」について語る
今回は、俺が人生で一番好きな映画「サマーウォーズ」について語ろうと思う。
※読む前に注意書き
映画の感想はすごく個人の価値観が反映されるものであると思っていますが
この記事の内容はほとんど筆者であるかわたく個人の解釈なので「それは違うだろ」と思われたり気分を害されたりしたらそこは申し訳ない。先に謝ります。
ちなみにサマーウォーズは7/28~8/11まで全国の映画館で再上映しているのでまだ見たことがない人も見たことがある人もはぜひとも映画館見ていただきたい。
(元ネタになったぼくらのウォーゲームも映画館で見れねえかなぁ)
サマーウォーズのここが凄い
その1.話の解像度が凄い
まずサマーウォーズという映画の世界線には以下の2つの要素が大きく関わってくる。
・田舎の親戚の集まり(で、数学が少し得意な普通の高校生が世界を救う)
・「OZ」という全世界で普及しているSNSの存在
この一見結びつかない2つのテーマが見事にマッチしていて、さらにこの2つの要素をかなり解像度を高くして取り扱っているのが本当にこの映画の凄いところだと思う。
この2つのテーマで何か脚本書いてね、映画作ってねと言われてこのストーリー思いつくのがまずありえないし、そんでもってできあがった世界観が良すぎないか??と思うんですがみなさんどうでしょう。
で、解像度が高いっていうのは結局何を言っているかというとこの2つの要素に対する解像度が凄い。
「田舎にいる親戚が夏のお盆の時期に大集結する」という経験をどれくらいの人がするものかどうかわからないが、まーーーーじでこれがリアルに描かれているなと思う。
家系図のどこにいるかわからない人、何しているかよくわからない人がいて、
夏にとりあえず集まったはいいものの大人たちが忙しなくしていて、子供は暇で、、、
登場人物の項でも記載するが、根本の世界観の軸であるとこれがとにかくリアルに描かれていてこの映画のすごく良い部分の一つだなと思う。
(ちなみに筆者の祖母は4人兄妹で、それぞれの子供とその旦那嫁、孫がほぼ全員お盆になると集合していたのでまじでサマーウォーズみたいな経験を毎年していました。)
そして、SNSが普及した世界に対する解像度、SNSが普及しすぎるとこんな弊害も起こるよね、ということに対する解像度もこの映画は常軌を逸してるんじゃなかろうか。
この映画は”OZ”のサービスについての説明シーンから始まる。
最初にOZの世界観を演出しておくことで「あ、この世界はOZのおかげで成り立っているんだな」という前提がすぐに入ってくる。当時の人からしてもすげえ便利そうなサービスだなあということはすぐにわかると思う。
このOZがインフラをはじめとする人類の生活基盤からの依存度がとにかく高いという事実が、「ラブマシーン」の暴走による世界中の大混乱を招いてしまうのだが、、、
これを描けるのが凄い。
しかもSNSの存在感がまだまだ薄い2009年に公開されているというのだから凄い。
2023年でこの話を思いついても正直そこまでインパクトはない気がします。
(他の細田作品でも「竜とそばかすの姫」の冒頭の世界観の表現も同様に素晴らしいと思う、尤もこの映画は脚本が酷すぎて誉めるところはそこぐらいしかないが、、、※個人の感想
よく勘違いされるので補足しておくと、「サマーウォーズ」は細田監督の作品として有名であるが、あくまで脚本は「奥寺佐渡子」氏が書いている。細田監督は主に映画内の演出に携わっていている。但し例外として「竜とそばかすの姫」では脚本を細田氏が書いている)
ちなみに主人公である健二が得意な数学についてもまあまあ上手い取り扱い方をしているなぁと思った。
高校生ワイは健二に憧れてモジュロ演算を必死に覚えようと思ったけど頭が悪いので無理でした。
(コンピュータには解くのが不得意なRSA暗号とか、2056桁の因数分解はどう考えても人間にも無理だと思うんですが、、、、、あと、映画では2056桁って言ってたけど絶対2048桁の間違いだろこれ)
その2.無駄なセリフ、シーン、登場人物が一切出てこない
サマーウォーズに出てくる親戚一家として「陣内家」という大家族が出てくるのだが、下の家系図を見ての通り、これがまあかなりの大所帯なのである。
それであるにも関わらず、この大所帯の一人一人それぞれが「よくある親戚の集い感」を丁寧に描写してくれたり、ストーリーの根幹に関わってきたり、世界観の形成に貢献してくれているのが凄いな、と感じる。
例えば
・元気なお爺ちゃん感
・食事シーンで語られる「上田合戦」でのやたら家系に詳しく話の長い感じ
⇨後にvsラブマシーンでの戦略に繋がる
・親戚内でたまにいる家事を手伝わないどうしようもない人の存在
・息子の了平の甲子園を常に応援している(≒夏っぽさ、映画の季節感の描写)
その他にも親族の大人たちもそれぞれ別の職業に就いているが、それぞれの職業がちゃんと活きてくるシーンがたくさんある。
(ちょっと言えないとこ、のシーンすこ)
そしてサマーウォーズには”3人の主人公がいて、3人それぞれの戦いが描写される”
という裏テーマがあると思う。
1人目の主人公:小磯健二(ケンジ)
2人目の主人公:篠原夏希(ナツキ)
3人目の主人公:池沢佳主馬(カズマ、キングカズマ)
正直カズマが主人公だろみたいなシーンの方がこの映画全然多いまである。
この映画が短時間で見どころがたくさんあって飽きないのは登場人物の多さだったりこの3人のそれぞれの戦いが休みなく良いバランスで繰り広げられるところにあると思う。
というかこんなに登場人物が多いのにそれぞれのキャラを殺さずにたかが2時間弱の映画にまとめられるのって何?神か?
冷静に何回も見返すとナツキは結構嫌な女ということにも段々気づく
その3.伏線の散りばめ方がうまい
まあ別に特段伏線がすごい映画というわけではないけど、良作の映画に多い「伏線の埋め方がどれも綺麗で無駄がない」というのがこの映画の良さを際立てているようにも思います。
・侘助が栄の薙刀を避けた際に携帯を落とす(一瞬だけ描かれる)
⇨この携帯をナツキが拾い、後に侘助が栄の誕生日をパスワードにしていたことの描写、侘助への連絡手段につながる
・冒頭からずっとしれーっと「小惑星探査機あらわし」のニュースが流れている
⇨ラストのシーンでラブマシーンの最後の抵抗に使われる
映画の日常シーンで流れているニュースって8割は伏線な気がする
・万助の「多数を率いる徳川軍に対し少数で戦い抜いた上田合戦」
上に書いた通り、何でもないように思えるシーンでの語りが後のラブマシーン戦の戦略に繋がる
・ナツキvsラブマシーン(花札)にて、ラブマシーンが所有するアカウント数の表示が2で止まる⇨健二のアカウントがまだ取り返せていないことの示唆
0じゃなくて2なのに勝ったって皆が思っちゃうその心理をちゃんとこの映画はついてくる。
・ラブマシーンはAIでありながら「ゲームが好き」という特性をもつ説明
⇨各シーンでの行動原理に繋がる
カズマの登場時のセリフ
「ゲームじゃない、スポーツ。戦って勝つのが好きなんだ。べつにゲームは好きじゃない」
⇨カズマはあくまでゲームは好きではなく、OZの世界における格闘技をスポーツとして捉えている。
カズマvsラブマシーン(1回目)
カズマ敗北後のセリフ
「でも、奴は違う。奴はゲームが好きなんだ」
⇨ラブマシーンはOZの世界での暴走をゲームとして楽しんでいる
花札での勝負を申し込む時のカズマのセリフ
「奴は必ず乗っかってくる」
⇨ゲーム好きのラブマシーンは花札の勝負を受け入れてくることを完全に読んでいた
〜個人的にいいと思う描写、セリフなど〜
・栄から侘助への第一声「ご飯食べたかい?」
⇨遺言「家族へ」で「みんなでご飯を食べなさい」
資産を持ち逃げした侘助と10年ぶりに再会してこのセリフ、、、、
遺言にもある通り栄おばあちゃんは家族みんなのことを想っていることがよくわかる。そしてこの映画のテーマである「家族愛」が良く描写されているシーンではなかろうか。
・万作おじさん(医者)「いや…寿命だろう」
ラブマシーンの暴走により栄の持病(心臓病)のモニタリングが正常にできていなかった⇨ラブマシーン(侘助)のせい、と考える親族一同
医者としての一仕事を終え、母親が亡くなり周りの親族もかなり動揺している中でタバコを吸いながら放った一言。
そこでこのセリフが出てくる医療人としての器というべきなのか、器量深さというか、、、
・翔太「しゃんとしろ!俺たちがついてる!」
ずっとウザいキャラとして描かれていた翔太が最後の最後で認めていなかった健二を勇気づけるのがいい。
氷を勝手に運んだのは許されないけど最後にちゃんと株上げてくれた。
結論
まだまだこの映画の良いところは筆舌に尽くし難いのですがとにかくサマーウォーズは神映画です。
記事見返したら侘助の良さとか栄おばあちゃんの凄さとかに全然触れられてないやん、、、と思いましたが書くのだるいんでもう公開します。
みてない人はぜひ一度でいいのでみてください。